仲間が一人バテた時、どうする?

8月になっても毎日とにかく暑いですね。
こう暑くて、元気いっぱいなのは丸葉岳蕗の花くらいでしょうか。
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最近、暑さのためにバテたり具合が悪くなったりする方が多いです。
水分、塩分、カリウムを採る、など
熱中症対策の知識は皆さんしっかりしていて、気をつけてらっしゃるんです。
それでもどうしても、調子を崩してしまうことはありますね。

七ツ石小屋では、具合が悪くなった方が来たら
もちろん応急手当で必要なことはしますし、
客間で横になって休んでもらったりもします。
予約がなくても宿泊にも応じます。
それは山小屋の役割なので良いのですが。

パーティの中の一人がバテて、他の人は大丈夫な時に
非常に頻繁に、判で押したように同じく、ある迷案が生まれます。
それは
日帰りなら「バテた人を一人で七ツ石小屋で待たせて、
歩ける人だけで雲取山に行ってこよう」
または
一泊二日なら「バテた人を一人で七ツ石小屋に泊まらせて、
歩ける人は雲取山荘に泊まろう」。
要するにトカゲの尻尾切り案です。
これは、ダメです。

バテた本人が
「私はいいから、皆は上に行って」
「私のせいで皆が上に行けないのは申し訳ない」
と言うんです。100%、そう言うんです。判で押したように。
でも、ダメです。

登山客の視点からすると、
小屋番が具合の悪い方を招き入れ
「服をゆるめて、水を飲んで、そこに寝ていいよ」など
何でも「いいよいいよ」と言うので安心して、
「救護は小屋番さんがやってくれる」
「私たちはすることがない」
と思ってしまうのかもしれません。
「じゃあ〇〇さんはここで休んでてもらって私たちは…」
となった途端、小屋番がきっぱり
「ダメです」と言うので大抵びっくりされます。
でも小屋番視点だと、
応急手当が済んだので、山での行動のルール解説に移っただけなんです。

どこの山小屋でも、
応急手当のサポートはしますが、
トカゲの尻尾切り山行のサポートはしないはずです。

登山は「自己責任」とよく言いますよね。
この「自己」とは個人ではありません。
パーティの場合、パーティ全体で「自己」です。

原則的にパーティは別れないでください。
最後まで全員で一緒に行動してください。
一人バテたということの責任は、パーティ全員が負うべきです。
山行の目標、例えば「雲取山頂に行くこと」は一度諦め
「全員無事に下山すること」を優先すべき状況になった、
そのために全員協力しないといけないんです。
バテた人にとってどうしたら一番いいかを全員で優先させてください。

具体的にこの小屋の位置では
日帰りの予定なら、「充分な休息をとったらすぐに下山開始」が一番いいでしょう。
他の人が雲取山頂ピストンするのを七ツ石小屋で待つというのは、
バテた人にとっては実は単なる大幅な時間のロスです。
すぐに下山開始ならゆっくり降りられたのに
皆を待つという時間のロスのために、
下山時に再び自分に合わないペースを求められることになってしまいます。
下りでまた体調が悪くなったり、転倒して怪我をしたりという可能性も考えると
やはりなるべく早く下山開始ですね。
一泊二日なら、
「全員で七ツ石小屋に宿泊後、翌日の回復度合いを見て判断」になるでしょう。
一晩休めば、だいぶ回復して雲取山頂ピストンできる場合もあります。
とくに最近は、下界で暑くてあまり寝れていなくて、
さらに暑い中登って来てヘロヘロになっちゃった方が
涼しいこの小屋で一晩ぐっすり寝て、早朝に歩き出せば絶好調!
ということもよくあります。
全員で七ツ石山まで行って下山というのもいいと思います。
ある程度の達成感がありますし、雲取山の姿が見られて、
「今度また皆で挑戦しようね」というモチベーションにもなります。

例外的に、10名前後のきちんと組織されたパーティで
バテた人にサブリーダー格が一人(理想は二人)付き添って七ツ石小屋に泊まり、
本隊は雲取山荘へ、という方たちを受け入れたことは何度かあります。
これはトカゲの尻尾ではなく、ちゃんとブレインがついていますからね。
逆に、一人がバテてから
「どうしよう?どうする?付き添いが必要なの?誰が付く?」
などと話しあっているパーティは
リーダー・サブリーダーが不在または機能していないんですから、分隊は無理でしょう。
商業ツアーのガイドさんでもこういうときの判断ができず、
「一人置いていったらダメですか」「どうしたらいいですか」という人が
今までに何人かいました(もう、こちらも驚かなくなってしまいました…)。
そういうパーティには
「絶対にバラけないで全員で即下山」をすすめることにしています。
それがそのパーティとして最低限の可能なラインでしょうから。

「自分のせいで皆が目標達成できないなんて…」
「あの人のせいで山頂に行けなかった…」
と考えてしまう方は単独行がおすすめです。
その代わり、当然、単独行のリスクも請け負うことになります。

最後におすすめの本を紹介します。
『山岳遭難は自分ごと
「まさか」のためのセルフレスキュー講座』
著者は北島英明さん、ヤマケイ文庫から出ています。
「セルフレスキュー」という言葉が本全体の背骨となって
パーティ行動の必要性と実践的な方法が書かれています。
単独行の方がより安全に単独行を遂行するためにも良書です。
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アルプスを目指している方も、雲取山が目標の方も、
この夏の課題図書と思って是非読んでみてください。

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