七ツ石神社のお話 <社殿再建 前編>

今回のブログは、前後編に渡って七ツ石神社の社殿再建についてです。
登山者の方から質問が多いので、当ブログでも記しておこうと思ったのですが、
実は小屋番T、思うように筆が進まず……。
小屋お抱えカメラマンの佐治多さんに相談したところ、
快く代筆を引き受けてくださいました。
そしていただいたのが、単なる経緯の解説ではなく、
おそらく佐治多さんだけが可能な「こんな切り口から書くか!」
(これは自分らでは書けないわ、少しこそばゆい…けどありがとう!!)
という以下の文章になります。
もちろん文中の、5年間に渡って撮った入魂の写真も全て彼の作品です。
それでは佐治多さん、どうぞー!(^o^)つ

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佐治多利康ですm(_ _)m
昨年の話となりますが、七ツ石山頂直下の七ツ石神社が再建され、
11月7日には修復された狛犬も帰還してのお披露目となりました。
今回はこの七ツ石神社の旧社殿の頃から現在に至るまでを、
前・後編に分けて写真とともに振り返ってみたいと思います。
七ツ石神社の来歴等は「狼伝承と登る七ツ石山展」などでも紹介してきたので、
ここでは神社を近くから日々見守ってきた小屋番さんたちの関わりを中心に。

まずは前編ということで、旧社殿の頃のお話。
私が初めてこの七ツ石神社を見たのは2013年の晩秋。
その夜、七ツ石小屋に初テン泊したのが
当時アルバイトで入っていた小屋番Tさんとのつきあいの始まりにもなります。

さて、本題の旧社殿ですが、それはまあ強烈なインパクトを受けました。
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(2014年7月撮影)

木立の暗がりの中にひっそり。
朽ち果てた社殿が斜めに傾き、つっかえ棒で立っている・・・そのあまりの異形に絶句。
あたりは何ともないただ爽やかな山の景色なのに、
覆屋の中に入るとその中だけが外界から隔絶されてしまったかのような錯覚に襲われる。
今にも倒壊しそうな社殿。1体のみかろうじて残っている狛犬。
こんな山奥に、誰が何のために建て、どんな経緯でこうなったのか。
柱に対してどう見ても不釣り合いに大きな屋根が、
なぜこの絶妙なバランスで支えられているのか。
目に映るあらゆるものが謎。なのに何故か、どことなく安堵感をも覚える不思議な空間。

山の中に突如として立ち現れるこの異様な空間に魅せられ、
「残されているうちにいろんな季節・時間帯で写真に収めておきたい」という思いから
何度となく撮りに登るようになりました。
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(2017年11月撮影)

神社のある七ツ石山頂は、雲取山を目指す登山者にとっては障壁でもあり、
ほとんどの方は体力を温存するためにこの山頂は通らず巻道を迂回して雲取に向かいます。
そのため、たくさんの登山者を迎える鴨沢ルートであっても
この七ツ石神社をご覧になった方はそれほど多くはなかったでしょう。
そうしたことも、長く放置されていた理由のひとつだったのかもしれません。

当時入っていたもう一人の小屋番さんに聞いたところでは、
麓の小袖集落の氏子さんの減少や高齢化により、
山頂にあってはきちんとお祀りすることができないとの事情から、
七ツ石神社に祀られていた御神体はずいぶん以前に
小袖集落に降ろされお祀りされているとのこと。
「民俗の信仰」という文脈では、この時点で既に社殿は「ぬけがら」であったと言えます。

それでも、傾いた社殿には何かを訴えかける力がありました。
誰にも知られることなくひっそりと息絶えようとしている山里の文化。
朽ち果ててもなお、絶妙なバランスでその地に立ち尽くしたままの社殿。
その姿から、小屋番さんはじめ小屋の常連客の間では、
どんな逆境にも耐え抜く「不屈の存在」として敬愛されていました。

その後、2016年春から小屋番TさんとT氏のご夫婦が正式な管理者となってからは、
登山道の整備や薪集めの折に神社の様子を日々見守り、
「社殿後ろの磐座こそ本来の御神体なのだろうから何らかのお祀りはしておきたい」と、
小屋番T氏が小屋の常連客とともに(あくまで個人的に)登山者の安全を願って、
夏越や年越の大祓に祝詞が捧げられるようにも。
1-3
(年越の大祓の祝詞を捧げる小屋番T氏 2016年12月撮影)

しかしながら、いつまでもこの状態で放置するわけにも行きません。
そこで、有志とともに企画したのが
「狼伝承と登る七ツ石山展(第1回:2017年7月 東京ドイツ文化センター)」
でした。
七ツ石神社の狼信仰を調査されていた丹波山村地域おこし協力隊の方、
丹波山村のお土産として七ツ石神社の狼信仰をモチーフにした
手ぬぐいのデザインを手掛けられた玉川麻衣さん、
そして、七ツ石小屋の小屋番としても働かれ、
山での暮らしをご存知の方ならではの視点で爽やかな水彩画を描かれる佐藤けんいちさん。
七ツ石山を通して偶然のように知り合った4人で、
まずはこの山とその神社にまつわる山岳信仰や伝承の存在を
できるだけ多くの方に知ってもらおうということで、この展示企画はスタートしました。
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(冬の西日を受ける旧社殿と狼の狛犬(吽形) 2016年12月撮影)

当初は、この企画を通じて七ツ石神社の認知度を上げ、
そこからクラウドファンディングなどで再建の資金を集めようか・・・などと
見通しの覚束ないことなども考えられていたのですが、
それから程なくして七ツ石神社は、まるで大きな輪が突然転がり始めたかのように
再建までの道筋を一気に辿るようになったのです。
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(雪の積もる朝に 2017年1月撮影)

〈続く〉

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