GW悲喜こもごも(あのさぁ編)

久しぶりの更新になってしまいました。

今年のGWは4/29、5/1に雨が降りましたがそれ以外は晴れ続き。
2017m・2017年の雲取山記念イヤーということもあって、
ほんとうにたくさんの方が入山しました。

鴨沢ルートは連日、早朝から夕方まで人間の往来がひっきりなし。
七ツ石小屋のテン場にもこんなに休憩の方が居るのは……
小屋番Tも初めて見ました(O_O)。
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ビール、コーラといった飲み物が次々売れ、売り切れになって
お客様をガッカリさせてしまいました。申し訳ございませんでした。
急ぎ歩荷したのですが、それもまた即売り切れに。
とにかく大変な騒ぎとなりました。
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さて、こんなに人が来ると、大抵「何か」が起こるのがこの山域の常です。
遭難ギリギリのケースが何件かありました。
私たち小屋番は対応に悩んだり、あとから判断を後悔したり、
それが何件も続くので気持ちの休まる暇がなく。
GW終了後、鴨沢の「山の休憩所かゑる」のマスターが
「こんなに人が入って遭難事故が一件も無かったのは快挙だよ」
とおっしゃってくださり、涙が出そうになりました…。

少しでも今後の遭難事故を減らすために、
このGWで一番危険だったケースを紹介します。

5月3日、11:30ごろ。人がごった返し日も照りつけるテント場で
高齢の女性が一人でいらっしゃるので、小屋の中へどうぞと声をかけました。
見ると全く山の装備ではない。靴は完全に町中用で底も擦り切れてツルツル。
お話しを伺うと75歳。30代?の息子さんと10歳のお孫さんの三人で登ってきた。
三人とも山の経験は全く無し。雲取山日帰りの予定。
自分がバテたので、息子さんとお孫さんの二人で雲取山に行き、
テント場で戻って来るのを待っていたとのこと。

この時点で、息子さんは地図も持っていない、
ここから雲取山まで何時間かかるかも分かっていない、
ケータイもつながらないキャリアだと判明したので、
小屋番が走っていって息子さんたちを連れ戻そうかとも考えたが
この人混みの山では難しいし、小屋も忙しい。
結局、戻って来るのを待つことに。

息子さんとお孫さんが戻ってきたのは15:00すぎ。やはり二人とも全く山の装備ではない。
この小屋に宿泊して翌日ゆっくり下山することをすすめたのですが、
予定どおりこれから降りると言う。
息子さんに、全く装備も知識もなく高齢者と子どもを連れて山に来たこと、
小屋番に一言もなくお母さんを置いていったことは間違いであると厳しく言い、
お母さんの靴では下山中に転倒滑落、骨折などの危険があるが
絶対置きざりにしないように、周りの人に助けを求めるなどして救助を呼び
最後まで責任を持って下山するようにと伝えて
15:30過ぎに送り出しました。

ですが、小屋のすぐ下の斜面でやっぱり…お母さん滑っています。
その様子を見て、小屋の常連さんが追いかけて一緒に下山してくれました。
常連さんが何度も転ぶお母さんの手を取り、難所はおぶっていって、
小袖の村営駐車場に着いたのは19:00過ぎだったとのことです。

それで、翌日のTwitterに以下のような投稿をしました。

「【小さなお子様、高齢者、初心者をお連れの方へ】
お連れの方が怪我や体調不良で行動不能になった時、
あなたは適切な行動をとれる自信はありますか?
お連れの方を背負って下山したり、
または救助を呼んだりする可能性を考えたことはありますか?
山中で携帯電話がつながらなかったらどうするのが最善か、知っていますか?
下山するまで責任ある行動ができるかシミュレートしてみてください。
自信がなければ山行するべきではありません。」

この三人のご家族の事件、小屋番としても決して完璧な対応ではなく
「こうするべきだった、ああするべきだった」と今も考えてしまうのですが…
一つだけ、どうにも腑に落ちない気持ちがあるので吐露させてください。

山は自己責任。装備と体力と知識が必要。
それらに欠けている人は、怪我しても遭難しても仕方がない。これは正論です。

でもさぁ。

5月3日、驚くくらいたくさんの人が入山していましたが
この三人のご家族が七ツ石小屋まで登ってくるあいだ、
おそらく誰一人として
「どこまで行くの」「その靴じゃダメだよ」「引き返したほうがいいよ」
といった声をかけなかったんですよね。おそらく、ですが。

あのさぁ、
山ってさぁ、そういうところだったっけ?
山の正論って、そういうことだったっけ?

と思う小屋番Tでした。

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